腹帯の正しい締め方 - 馬にとっての快適性を決定する鍵

腹帯の正しい締め方 - 馬にとっての快適性を決定する鍵

腹帯の締め方について知っておくべきこと

馬と騎手のニーズを同時に満たす馬具の正しい取り付け方への意識が高まると同時に、馬の体に合わせた頭絡、ハミ、そして腹帯への関心が高まっています。そして、多くの記事で、鞍と頭絡のフィッティングが取り上げられています。馬具を馬に (そしてもちろん騎手にも) 正しく装着すべきであることは、誰の目にも明らかなように思えます。しかし、腹帯の調整の問題については、あまり注目されてきませんでした。

腹帯は馬具の中でも重要な要素の一つで、主に馬の背中に鞍を固定する役割を果たします。しかしながら、その機能を十分に発揮させるには、競技種目ごとに異なる生体力学上の問題 (馬場馬術用の腹帯と障害飛越競技用のそれとは形が違うなど) と、対象となる馬の身体構造上の問題、これら両方を考慮しながら、個々の馬体のニーズを満たすように調整しなければなりません。

腹帯が正しく取り付けられていれば、全体的な馬の性能が大幅に改善され、生物力学的に良い影響を及ぼし、馬体の可動域の中でも特に前肢の動きが改善されます。その結果、馬は背中の筋肉の弛緩および持ち上げもかなり楽になります。リラックスした状態での動作は、筋肉の状態を改善し、馬にかなりの安心感を与えます。

腹帯を取り付ける部位には、解剖学的に重要な骨構造群 (胸骨、胸部、第 5 ~ 7 肋骨) および筋膜構造群 (主に胸郭に属する筋肉群と、さらに背中と胸部をつなぐ接続部 が集まっています。そのうち最も重要な筋肉としては、皮膚体幹筋、広背筋、上行胸筋 (深胸筋)、広背筋の下のさらに深層にある腹鋸筋が含まれます。背中の動きに合わせて胸骨を上げることが運動時の全身の適切な動作にもつながるため、馬の生体力学的には、これらの筋肉を上手く連動させることが不可欠になります。

腹帯が巻かれる領域に関する解剖学的構造

表層部
皮膚体幹筋

中間層
広背筋

深層部
腹鋸筋

最深層
外腹斜筋

胸腹鋸筋
(Thoracic ventral serrated m.)

広背筋
(Latissimus dorsi m.)

深胸筋
(Ascending pectoral m.)

外腹斜筋
(External abdominal oblique m.)

胸骨は馬の体の中で最も神経の多い構造の一つです。この骨は上肢全体を神経支配する腕神経叢の近くにあります。また、脊髄から皮膚の筋肉と肋間筋まで通る神経の接合部分でもあるため、胸部も神経支配しています。腹帯の下にある心臓、肺、横隔膜のような極めて重要な内蔵器官も忘れてはいけません。馬の運動生理学的にパフォーマンスを最大限に引き出すには、これらの臓器が最適に機能することが必要不可欠です。

腹帯の不適切な締め方に関連する症例

実例: 馬場馬術の5歳牝馬の馬主が腹帯部分の不快感に関する症状に気づいて、私に助けを求めて連絡してきました。腹帯が取り付けられるとその牝馬は、とても落ち着かない様子でした。その馬はサドルを取り付ける馬主に対して攻撃的な行動を示し始めるほどでした (噛みつく、前脚で蹴る、など)。

この馬主の方は早めに気づいて、助けを求めることができました。最初の話し合いで、私たちはこの牝馬の行動を引き起こしている他の要因を除外することができました (胃潰瘍、不適切な鞍、口/歯の不快感など)。やはり腹帯のフィッティングに問題がありました。腹帯が短すぎ (肢を引っ込める際にバックルが肘関節に干渉していました)、かつ素材が硬すぎた (肘関節の後ろの皮膚の触診時に過敏な反応) ようでした。徒手的治療のセッション後、一連のストレッチ運動に加え、素材の柔らかい長めの腹帯を取り付けると、問題は無事に解消されました。

正しい腹帯の取り付け方が分からないという方は、その馬に適した腹帯を探して、鞍に正しく調整できる鞍フィッターや馬の理学療法士などの専門家に相談してみてください。



理想的な腹帯の締め方とは

• 神経に過剰な圧力をかけずに、その機能を最大限に発揮させる必要があります。取り付け箇所への圧力を均等に分散させる腹帯を使用することが、最善策です。注目するべき点は、腹帯の幅と、内側 (馬の皮膚に触れる側) の表面を平らで均一にすることです。

• そうすれば胸部を自由に動かせて、馬本来の能力が制限されることもなく呼吸がしやすくなります。両面に伸縮性のある腹帯を使用すれば、、運動時に胸部を自由に開くことができる。

• 馬の骨格を考慮して、種目に合う形状にしてください。たとえば、障害飛越競技のトレーニングをしている馬は、胸骨部分の保護を高めるために幅の広い腹帯を装着する場合が多いです (これらはベリーガードまたはスタッドガードとしても知られています)。ジャンプ中に胸部をサポートするだけではなく、蹄やフェンスへの接触により起こり得る怪我の予防にもなります。

• 鞍と騎手の重量が均一に分散されるように、馬の背中の形に合わせて取り付けてください (短すぎず、長すぎず、ねじれたり、きつく締め過ぎたりしないこと)。

• 同じように腹帯の素材も重要です。馬の敏感な肌は、合成繊維に対しては異質な反応をしてしまうので、高品質なレザーやウールなどの天然素材のものを使用するようにしてください。

この記事の著者である理学修士のMarta Kulikowska について

動物科学の分野でコペンハーゲン大学の健康医科学部、および動物科学の分野でワルシャワ大学のライフサイエンス学部を卒業し、馬の機能解剖学と生体力学を専門としています。コペンハーゲン大学では馬の生体力学とリハビリテーションの研究グループに所属しています。公認の馬の理学療法士である彼女は、2017年からデンマークで自分の会社を経営していて、技術の推進、騎手の訓練、馬の解剖学における乗馬専門職の育成、理学療法を用いた馬のケアなどに力を入れています。2020 年からは、International College for Professional Bitfit Consultants (オランダ) の学生として正しいハミの取り付け方を研究しています。

国: Ukraine

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